決して安くはなかったが、わたしはいくらかの紙幣と引き替えに、その妖精の入った檻を老人から受け取った。
自宅に帰り着き、玄関に鍵をかけると、私は妖精をじっくりと観察した。
最初の印象と変わらず、それは人間に酷似した顔をしていた。両手にひとかかえほどある檻の中は少し広すぎるようだったが、それはもう鳴くこともせず、体を丸めてじっとしていた。
全身がスポーツ刈りのような毛並みを眺めているうちに、私はあの裏通りで感じた妖精の魅力が急速に薄れていくのを感じた。
冷静になって考えると、とりたててかわいいわけでもなく、むしろ明るい光の下で見ると、嫌悪感すら起こさせる醜悪な姿である。われながら、どうしてこんなものを買ったのかわからなかった。
(きっと変種のサルか何かよね)
妖精に対する熱意を完全に失い、私は檻をそこに放ったまま床についた。
闇の中に、緑色の相貌がやけに大きく見えた。
目が覚めたとき、私は当然自分のベッドの上にいると思っていた。そして今は朝だと思っていた。
ここは黄昏の裏通り。いつの間にかわたしはあの檻の中にいた。
むしろの上に広げた怪しげな商品の前に、ぼろ布と見まごうような翁が鎮座している。
気がつくと、OLらしき女性が私の入った檻を覗き込んでいる。
「珍しい動物じゃぞ」
「………え?」
おぼろげながら、私は事実を理解しはじめていた。なるほど、確かに珍しい動物だ………この檻は。
しわがれた声の主は、私の入っている檻を指して言った。
「これは珍しい動物でな………なかなか賢くて、言うこともよく聞く………可愛いもんじゃよ」
どうしようもなく、私はあわれっぽくきいきいと鳴いた。
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