存在


「ねぇ、まみちゃん知ってる?K中学に幽霊が出るんだって」
「ほんと?」
「旧校舎のトイレにね、おかっぱの女の子が『遊ぼう』って言って現れるんだって…」
「こわーい…そういえば、M小学校の女の子が、裏の林で幽霊を見たって噂よ」
「そうそう、あたしの友達も、髪の長い女の人を見たことあるって言ってたわ」
「怖いわね、霊って。死んだ人の怨念がこの世に残ってるのね。きっと」
「ほんとに、怖いわね。でも、ちょっと見てみたいわ」
「あんたたち、いいかげんに寝なさいよ」
 小学生の頃、いとこのまみちゃんの家に泊まると、いつも怪談話に花を咲かせて寝ようとしないあたしたちに、おばさんはしょっちゅう言っていた。
「幽霊なんて、いるわけないでしょ!」
 そう言って、電気を消してしまうのだ。おばさんは「幽霊なんているわけない」が口癖で、霊魂の存在をまったくといっていいほど信じていなかった。
 お説教され、あたしたちは口を尖らせながらも、おとなしく眠りについたものだった。
 その叔母さんが交通事故で急死したのは、あたしたちが高校生になった春のことだった。
 お葬式の日、ひさしぶりに顔を合わせたあたしとまみちゃんは、数年ぶりの出会いを楽しみ、夜遅くまで話をした。
 いつしか話題は懐かしい子供の頃に移り、おばさんを思い、あたしたちは涙ぐんだ。
 そのときだった。突然部屋中の電気が消え、おばさんの遺影がカタカタと音を立てて揺れた。冷たい風が吹き抜け、障子にぼう、と青白い人影が映し出された。
 ぞっとしたあたしたちは、震えながら思わず手を握り会ってつぶやいた。
「まさか……おばさんの…幽霊?」
 人影がゆっくりとこちらを向いた。そして、聞き覚えのある声が部屋じゅうに響きわたった。
「幽霊なんて、いるわけないでしょ!!」


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